コラム
自分の領域を超えて Out of your comfort zone
2014年11月25日
「魚に睨(にら)まれて食事をするなんて初めてでした...」
日本の食卓に、頭付きの魚が並んだのを見た、アメリカのワシントン州立大学4H国際交流担当者キャロリンの感想です。日本では魚の頭は新鮮さの証明にもなりますが、彼女の母国では、頭はついていません。
一方、ペンシルベニア州立大学4Hのパトリース教授は、日本で温泉に誘われた時、アメリカでは他人とお風呂に入る習慣がないので、ためらいました。しかし、彼女達はそこで、国際理解のための行動で大切な言葉を思い出しました。それが「Out of your comfort zone」です。つまり、自分が"心地よいと感じていた領域"を超えなければ、日本人のことを理解できないと思ったのです。
私達も、外国への単なる観光旅行でしたら、そんなチャレンジは必要が無いかも知れません。しかし、その国や人々のことをより深く理解する目的の旅では、時には"慣れ親しんだフィールド"を超えなければなりません。
毎年ホームステイに行く若者達は、豊かな自然環境に恵まれ、家族の絆が強い、昔ながらのアメリカの生活を体験しています。そこでは多くの家庭でペットや動物を飼っていますが、経験がないので最初から苦手だと思う人もいます。でも、思い切ってその頭を撫でた時に、動物も家族の一員として可愛がっている彼らの気持ちが分かるようになりました。
アメリカのお父さんが3才の子供に、「自分たちは買い物に行くけど、君はどうする?」と尋ねているのに、びっくりした日本の若者がいました。自分の意志を表現する大切さを、もう教えているのです。アメリカの親達の子育ての目標は、早くに「自立」させることです。同時に子供の「個」というものを尊重していることでもあります。
ですから、ホームステイをしていると、日本では、「別に...」などと曖昧(あいまい)な返事で通ったことでも、Yes, No をはっきりと言わなければならない場面に出会うでしょう。
インターネットの発達で、世界中の情報が瞬時に手に入る時代ですが、これらの例のように、海外の人々の考え方を理解し、自分の視野を広める鍵となる「Out of your comfort zone」の精神は、実際にそこに居て体験してこそ学ぶことができるのです。
特定非営利活動法人ユートレック
理事長 宮崎哲人